開催中の企画展
九頭龍の宇宙
この絵は囲碁史に残る妙手「耳赤の一手」を題材にして描かれています。
囲碁は、盤上が天空に、黒と白の石が星に見立てられます。数々の星たちが行き交い、息づかいする様は、人の世に似て古今多くの囲碁人を魅了してやみません。時には囲碁史に残る妙手も生まれ、それらは盤上の芸術と評されています。
天空にうごめく龍たち。右下隅の龍は打ちひしがれた姿。なにげなく見えた光明が、中央の龍によって今まさに盤全体に輝こうとしています。天賦の才が強い意志を持った龍となって現れた瞬間です。この龍こそ時を越えて、若き日の本因坊秀策の姿を彷彿とさせます。
この龍は幾多の苦境をはねのけ、凛としています。調和の取れた威圧感はすでに名人の風格が備わった姿でした。相手は動揺し、その耳が赤くなったと伝わっています。耳赤の一手を境に形勢は不明から、徐々に黒に傾きました。
耳赤の一手棋譜
白 井上因碩(幻庵) 二目勝 先 桑原秀策
●第1譜(1~100)
●第2譜(101~127)
●第3譜(128~200)
●第4譜(201~325)
『九頭龍の宇宙』のマリスが生まれた経緯
この絵は、アーティストの高橋りく氏が、囲碁インストラクターの成島奈津子氏と力を合わせて完成させたものです。
高橋りく氏は、2010年5月、個展のためアメリカニューヨーク市に滞在中、全盲の囲碁愛好家、柿島氏の言葉をふと思い出しました。
「囲碁とは、絵を描くように打っていくものですよ。」
次回の作品を模索する最中、その言葉から稲妻に打たれたような感覚を受け取ったと言います。囲碁の棋譜をイメージした絵をマリス(砂絵)で描きたい。メールでそう柿島氏に相談したところ、本因坊秀策の『耳赤の一手』の棋譜を勧められたとのこと。
柿島氏の友人、成島奈津子氏からのアドバイスを受け、『耳赤の一手』となる127手目までの棋譜と最終棋譜の資料を手に、高橋りく氏はただひたすら毎日数時間そのふたつを見つめているだけ。
1ヶ月目、夜空を何気なく仰いでいると、棋譜が五頭の龍に見立てられることに気づき、すぐさま木火土金水の龍で127手目まで、さらにはその未来までも含めて龍の姿の原案図を描いたそうです。
成島氏に確認を依頼し、「ほかにも四頭の白龍が四隅にいるような気がする」と話したところ、「…なるほど」と今度は氏がその四頭の姿形を原案図に指し示して下さったとか。
その後、ふたりは並々ならぬ努力を重ね、九頭の龍の形をひとつひとつ丁寧に、多大なエネルギーをもって解釈・解明し、磨きをかけて完成させたのが、このマリス『九頭龍の宇宙』です。
高橋りくのマリスとは?
―美術史上初、障害の有無に関わらず、すべての人の絵画鑑賞が可能に。~きっと君の指先にマリスの粒が届くでしょう~
「私のマリス技法はあくまでも砂絵の可能性を追求した一種の手法です。これからの、多くのアーティストがこのマリスを土台として、より一層表現力のある技法を開発し、次々とすばらしい芸術作品が生まれてくることを願います。」
イメージ | 砂の粒子の粗さ + ハーブエッセンス モノクロ写真 + 色相 = カラー写真 明度+色相=豊かな色の表現 |
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明度とは | 色がモノクロ写真のように白→灰色→黒で表されます。 |
色相とは | 赤や黄色といった色味の違いのことです。 |
高橋りく Contemporary Artist
1993年東京造形大学彫刻科卒業。現代美術の作品を国内はもとよりアメリカニューヨークなど海外でも精力的に発表する現代美術アーティスト。 2009年マリス(砂絵)を発明。
2010年Maria Sunae Are Projectとしてマリスを世界に広める活動を展開中。
ホームページ: https://www.likutakahashi.com/
企画展情報
本因坊秀策囲碁記念館
尾道市因島外浦町121-1
●お問い合わせ先
TEL 0845-24-3715
●開館時間
午前10時-午後5時
●休館日
毎週火曜日・年末年始
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